『短歌研究2016年9月号』をはじめて買った。
うちのミセみたいな本屋には、短歌の本は一冊も置いてないし、短歌の雑誌も入荷しない。そのため自分の分を1冊、客注として入れてもらうように早めに注文をしておくのです。で、どきどきしてたら発売日、ほかの雑誌にまじって入りました。
短歌のお兄さんこと、小坂井大輔さんがっ!短歌研究新人賞候補作に選ばれてて掲載されてます!おめでとうございます!
短歌のお兄さんは、孵化した短歌ヒヨコが最初に背中をピヨピヨついてった敬愛する先輩歌人で、いわばヒヨコにとって親鳥のような存在。独自の世界を圧倒的に表現される素晴らしい先輩なのに、こんなヒヨコが悩んでいたら親身になって救いの手を差しのべてくれるような、ほんとに素敵な短歌のお兄さんです。
ご本人のブログ更新を差し置いて、僭越ながら短歌ヒヨコが『短歌研究』から引用させていただきます。身近な本屋で『短歌研究』が手に入らない、たくさんの人たちにも読んでほしくて。
「スナック棺」 小坂井大輔
閉まらない雨戸とフォークダンスする母に合わせて鳴らす口笛
株券が紙切れになる阿阿阿阿と居間で小さな父がのた打つ
わたくしは三十五歳落ちこぼれ胴上げ経験未だ無しです
ラガーシャツ着た父の写真ながめてた 落ちたね 今、雷が何処かに
ちらちらと腕のタトゥーを見せてくる姉の彼氏の前歯の黄ばみ
容赦ないってこれだ。星だった、降ってきたのは拳ではなく
罵声 わけのわからん鉢植え わたしへと飛んでくるもの達の残像
あれ 声が 遅レテ 聞こえル 死ヌのかナ だれ この ラガーシャツ の男ハ
棺のなかはちょっとしたスナックでして一曲歌っていきなって、ママは
わたしのなかの進路指導の先生が死ぬなと往復ビンタしてくる
リーダーって感じの主婦の読経が綺麗だ団地に朝を塗りだす
無くなった。家も、出かけたまま母も、祭りで買ったお面なんかも
サファリパークみたいに祖母が窓に手をかけて話をやめてくれない
次のかたどうぞ。の声に「あいっ」と言う 壁に気色の悪い蛾がいる