恋を語る歌人になれなくて

2016,5月 LINEで送信したメッセージを「それは短歌だよ」と教えてもらったことをきっかけに、短歌な世界に引き込まれて行く。おそーるおそーるな一歩一歩の記録。

未来2021年1月号の歌

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未来2021年1月号、すごく早く届けていただきました。

ありがとうございます。

でもわたし自身は、新年を迎える自信が無いので年越しギリギリまで駄々をこねまくります。やだやだやだー、今年なんにも成し遂げてないじゃん!

 

それでも、来年こそ、やります!

短歌的には、水面下で計画していることはありますが、わたしの発表分についてはまだ暗中模索しています。

 

未来賞、自分としてはがんばったつもりだったけれど、1月号が届いてみて、あちゃーやっぱりかー、という感じです。

がんばるのベクトルが間違ってたのか?とか、このテーマだと特定の境遇の人にしか意味が通じない部分もある?とか、反省したけど終わったことなので、忘れます、ぴやっ。

 

今月号は開いてびっくり、平岡ゆめさんと並んで載せてもらっていて、歓喜です。岡井欄のときから平岡ゆめさんの歌は好きで、それにゆめさんとは短歌はじめて最初期(まだ超人見知りだった時代)にリアルで出会った同郷のベテラン歌人だったので、大辻欄で並んでるのがふしぎな縁というか、うれしいです。名前も、ゆめ、しなの、と平仮名並びがうつくしくて素敵なので、これからもゆめさんと並ぶことができるといいな、いや、そのためにはわたしがもっと月詠をがんばらないと、と思うので、もっと研鑽したいと思います。

 

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1月号のうた 森田しなの

秋に向かうきもちはきれいに整わず半袖のまま十月をゆく

アクセルを踏み込むときの全能感ぶち破り越えられる気がする

読みきれぬツイートの波に君の写真ただよい来ればさらってしまう

ああ寒いいつからこうしていたのだろう除菌ウェットティッシュ乾いて

高熱でみる夢のなか墨汁とタロイモを混ぜ飲まされており

日本語の通じない夢おそらくは英語とスペイン語のちゃんぽんだ

畔にはミサンドリーという鳥の棲む気配してさざ波の立つ

メデューサの悲しき神話わたしにもメデューサを継ぐ欠片はありて

眠る前フランキンセンス香らせてわたしをさらう闇を待ってる

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工房月旦という、ちょっと前の月に出た未来から選評をしてもらうコーナーがあるんですけど、ここで歌を引いてもらうのもとても励みになります。

工藤吉生さんに、10月号の連作の中から大下容子アナが大好きなことを詠んだうたを二首引いていただきました。

母とふたりチキンラーメンすすりつつ大下容子アナを誉め合う/森田しなの

二人とも大下容子アナが好きわたしの好きは恋に似ており

(「未来10月号」より)

とても温かい評をいただいたので、ほわわぁ、とうれしくなりました。ありがとうございます。

 

これを読んでいる人がまだ2020年に居たら、良いお年をお迎えください。

既に越しちゃってたら、相変わらずぽやんぽやんしてますが新年もよろしくお願いします。

 

未来2020年12月号の歌「ロックスター」

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ひざの上に今月号の未来猫さん

今月号の未来が届いて、まだ月末なのに早く送ってくださったのですね、と思っていたら、きっぱりと不可逆的に師走になっていました。Oh…

師走は正直、嫌いですね。静かに過ごしていたいのに、ばたばたするのが嫌です。

 

未来、今月も届けてくださって、ありがとうございます。いつも感謝で何と言って伝えたらいいかわからないぐらいです。

 

今月号は、短歌の人たちと会えないし歌会はないし短歌ロスの限界がきていて、もうあかん、わたしの短歌ちゃん家出してしもて行方不明や、、、という状況から、イエローモンキーの昨年末の名古屋ドーム公演の配信をみて、すこし正気を取り戻してつくった歌でした。十首つくるのきびしくて、ちょっとこれは良くないな、と思いつつ数あわせに入れてしまった歌は落としてもらってありました。ライブのステージにちんどん屋さんが大勢であらわれて一緒になって演奏してた姿は圧巻で、歌にして残しておきたかったけどここは技量不足でした。

 

イエローモンキーのライブを短歌の連作にするというのは、もっと気持ちにもよゆうがある時にこそ再挑戦してみたいと思いました。

ファンの方が読んだら、これは失礼だぞと思われる点もあるかも知れませんが、ロックスターのファンですものきっとファンアートの一首、じゃなかった、一種と思ってかっこよくスルー決めてくださいますよね?

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ロックスター   森田しなの

 

あの夜のロックスターを三時間独占できるライブ配信

見えざりしステージは天国の地図高画質にて今甦る

エマとロビンがくちづけ交わせば歓声は極彩色に高まってゆく

冷静に見れば物凄い衣装だぞ昭和のかおりがしないでもない

五十代は実存的おじさんでありロックスターは奇跡のおじさん

この先もボトックスには頼らぬと語るロビンの美しき(読み:はしき)ほうれい線

イェッサー!と独り画面に叫ぶときライブに行けない苦さが滲む

お財布と相談しながらお布施する原価安めのグッズ選んで

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当たり前かも知れないけど、早くコロナが収束してほしい。

仲良しさんと集まって話したりごはん食べたり、歌会したり、ライブに行ったり、好きな時に好きなところへ旅をしたり、そして自粛のためでなく自由意志でひきこもりたいです。

 

未来2020年11月号の歌

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今月もコロナ禍の大変な中、「未来11月号」を届けていただきました。

たくさんの方のご苦労の上に成り立っている大切な本、本当にいつもありがとうございます。本屋が一軒もない山の中で生まれ育ったので(そして今もそこに戻って暮らしてる…)、この一冊の貴重さが身に沁みます。一か月まるまるかけてじっくり読ませていただきます。

 

今月は、いつもと同じらへんのページをめくってみても夏韻集のページが見つからず、え?え?突如消滅???(怖!)と思いながら目次を確かめたら、岡井さんの欄があった「未来」最後の位置に全員揃って移動していたので、最近引っ越しの夢ばかりみてたのは予知夢??と思いました。

この配置だと、欄頭ファイブも今まで以上に身が引き締まります。有り難いことですが、もっと精進しなければと思いました。

 

今月号の歌は、こちらです。

よかったらお読みくださいませ。

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父の居ぬときだけ母は語り出す子供時代の海辺の暮らし

離島には苺畑はめずらしく赤い実は母の憧れだった

母とふたり夜ごと交互に使いたるリンスのいらないメリットシャンプー

聞き返す母に何度も花椒(ルビ:フォアジャオ)と上沼恵美子のまねをして言う

殺される夢のおわりに母のこと初めてお母さんと呼びたり

包丁を研ぐ母の音きれぎれに聞くとき急に奥歯がきしむ

性欲をおもいだせない米茄子のまるみをいつまでもなでている

愛されることに慣れずに雨のなか駆け出していた野生のごとく

かわりなく暮らしは過ぎるガセリ菌SP株を信じつづけて

リモコンのdボタンだけ反応がおっとりしたまま立秋になる

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工房月旦のコーナーでは、工藤吉生さんに一首取り上げて評していただきました。

今年詠んだなかで特に、実感としてほんとにそうだったなあ、と思いながら詠んだ歌で思い入れがあったので読んでもらえてとてもうれしいです。ありがとうございます。もっとがんばります!

ゆるされぬ恋しておれば毎日は恥ずかしいほど輝いていた/森田しなの

(未来8月号掲載)

 

今月は、沼谷香澄さんの7月号アンソロジー作品「人生はオールオッケーです」にも一首引いていただいていて、しかも仲良しの掛水ヱイさんとぴったり並んで掲載されててすごくすごくうれしいです!

未来最新号の7月号アンソロジーのページから是非、ご覧ください!

 

アンソロジー、わたしも一度担当させていただいたのですが、とても勉強になりましたし、好きな歌を選んで作品を編むのはほんとに楽しかったです。またいつかチャンスがめぐってきたらいいな~☆などと思ってます。

 

明日は、椿大神社です。早く寝ないと。。。

 

未来2020年10月号の歌「トライポフォビア」

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今月は、月はじめにどびゅーんと高熱が出て下がらず微熱の日々がつづき、月後半の今になってようやく落ち着いてきた、そんな状況です。

理由は、代謝を上げる系の漢方を勝手な判断で購入して飲んでみたところ、即、全身が真っ赤になり地獄のようなかゆみでうぎゃーーーとなったので、アレルギーかと思います、何らかの。

 

今月の採血報告。

今月はそんな体調不良の後半、かゆみはおさまったけど全身が日焼け跡みたいに皮がぺろぺろめくれてる姿だったので、やだーと思ったけど、毎度採血に難儀することは看護師さんもわかっておられるので「前回も手の甲でお願いしてましたし」と奇跡的に被害のなかった手の甲をスッと差し出して事なきを得ました。今回はすんなり採ってもらえてよかったな。手の甲は痛いでしょうにすみません、といつも謝られるけど、こちらこそ血管が細くて困らせて申し訳ないし、慣れてるので痛くありませんよ~。

 

最近は、短歌ロスで枯れッ枯れの日々で月詠もヨボヨボです。

こちらは今月号の未来の歌です。そろそろロスがひどくなって枯れてきた頃のむりくり出した感ある月詠だけど、よかったらお読みください。

 

それにしても、人名を詠んだ歌では大下容子アナがだんとつに多いな。今回で白鵬さんを超えてしまったな。

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トライボフォビア  森田しなの

積年の悩みはとうとう名を得たり集合体恐怖症というらし

飾られたガーベラ開き切る頃のみっしり並ぶ花弁がこわい

花は咲くそれだけなれど花首をうつ伏せにしてガーベラ捨てつ

あなたにもわけのわからぬ滑稽な恐怖のひとつくらいあるでしょう

「本当に怖いのは人」と言う人に薄く笑ってその先を聞く

恐怖症(ルビ:フォビア)という言葉に抱く疎外感 拒んでいるのはわたしだろうか

好きなものばかり並べて暮らしたい鱒寿司、ネコチャン、大下容子

母とふたりチキンラーメンすすりつつ大下容子アナを誉め合う

二人とも大下容子アナが好きわたしの好きは恋に似ており

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今月号の工房月旦のコーナーで、大西久美子さんに一首とりあげて評をしていただいています。自分の意図した以上の深い部分まで読んでくださっていて、本当にありがたく、また次にがんばるためのエネルギーになるというか励みになります。

 

前髪を花切り鋏で切り揃えこれでええわとつぶやいてみる/森田しなの

(未来七月号から)

 

ほかの方の歌への評も勉強になるので、工房月旦はいつもじっくり読ませていただいてるのですが、歌会ロス全開!!!誰かの批評がききたいdeath!!な気持ちの今は、工房月旦を真っ暗な旅路にともった灯のような思いで読んでます。

 

未来2020年9月号の歌「恐怖のパレード」

今月号は、もしかして物流に台風の影響が出る前に、とおもって早めに送っていただいたのでしょうか。山の中の我が家にも、2日に届けてもらいました。

いつも大変ななか編集に携わって未来を毎月つくり続けてくださる皆さまに、本当に感謝しております。

町の本屋に出るにも半時間かかるので、月に一度届く未来は、一か月楽しめるお宝な一冊です。ありがとうございます。

 

今月号は、はじめてチャレンジした歌集の書評も掲載していただきました。

岡井欄所属の小貫慶子さんの春先に出た三冊の歌集を1ページにまとめたのですが、文字数の加減もあり、また、わたしの勉強不足や力不足もあり、うまく紹介できていないのではないか、と気になっています。何回か、わたしの書評のページが黒塗りになってて読めない、という悪夢もみました。でも、今月号にちゃんと載っていて、あらためて挑戦できる機会をくださったこと、とても感謝しています。

 

今月は久しぶりに欄頭5でしたが、それより10首掲載してもらったのはほんとに久しぶりでした。こりゃあダメだな落としてもらうだろうな、と思いながら出した歌を選歌後記で良い歌としてあげてもらっていたので、ますます自分の歌がわからなくなっています。

よかったらお読みください。

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恐怖のパレード   森田しなの

 

働かぬ一日はぬるく過ぎてゆく床に散らばる伸びた黒髪

昼寝する父の寝顔は未知のものデスマスクとはかくなるものか

やらなきゃとやる気がでないの狭間では眠りのほうから寄り添いに来る

どこまでが暗闇だろう始まれば終わりはあるのか恐怖のパレード

涼やかな眼差しから眼をそらせない美しい蛇に魅入られたまま

あじさいに脳の標本を思い出す鮮やかな青い脳が咲いてる

窓ぎわに母の育てる胡蝶蘭小さき人面ふわふわ並ぶ

月一度ジャンクフードを摂取する通院帰りのマクドナルドに

寝室は薔薇のかおりに満ちており「密です」と独りささやいてみる

いつかわたしもら抜き言葉を見過ごせる賢いおとなになれるだろうか

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今月の月詠もまだぜんぜんできてません。

まだ!!ぜんぜん!!!ぴゃあ!

・・・もっともっとがんばらないといけません。

 

未来2020年8月号のうた「恋と針」

今月も、こんな大変なさなかに未来8月号をつくって届けてくださること、ほんとうに感謝しています。

田舎暮らしで外にもほとんど出ないわたしにとって、月に一度やってくる未来は、全国の未来会員の歌がじゃんじゃんあふれてる本で、勉強が足りないわたしにはむずかしいところもあるけど知らない言葉や本をここでおぼえたり、ほんとうにすごく楽しみなのです。いつもありがとうございます!

 

今年はいっちょ、未来賞に挑戦してみようと、七月は二十首の連作をつくってみたのですが、ダメ過ぎて、これを出して選者の方々に読んでもらうのは失礼なのでは、、、と考え始めたら出せない気がしていたのだけれど、しめきり一週間前ぐらいで大改造劇的ビフォーアフターしました。推敲はたのしい。たのしいなー。ハハッ…。

 

自分のような未熟な者が、賞に出すなんて身の程知らずのおそロシア、、、とずっと考えてきたけど、夏韻集の先輩たちや歌友に背中を押してもらって、やっとこ出すことができました。

とっておきのお相撲切手を(まだまだ82円切手がモリモリ残ってるのに84円切手を…)おろしたので、あとはお相撲さんにがんばってもらいます(どのように?)。

 

わたしは自分で賞をとるより、まわりの仲良くしてくれてる人が賞をとったり歌集を出したりしてくれて、それをお祝いする空気に溶け込みたい側なので、この先、賞に応募することがあるのかどうか、無い気がしますけど、普段と違う追い込み方が出来た気がしていて、これを毎月できたらなあーと思いました。

 

そして、こちらが今月号の歌です。

かなり精神的に参っていた時なので、歌に詠むことでしかブチまけられなかった。誰にもすべてを打ち明けて相談できず、ほんとにつらかったし、良い歌を詠もうともできず、ただ言葉で吐き出したかったんだと思う。

8月号が届いて、改めて読んで、無理に仲良しこよしでなくてもいいけど、こういう気持ちのざわつく歌はもう詠みたくないね、とほんとうに思った。

 

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恋と針  森田しなの

嫌がらせメールでしょうかぐるぐるとあなたの真意に辿り着けない

むずかしいことを避けたい咲き終えたビオラの花がらちぎりつづける

いじわるに耐性はなくほろほろとばらのはなびら畳に散らす

裏切りは大好きだったの延長であなたの顔を思い出せない

みちならぬ恋しておりし年月よ春の日差しに透けてあらわる

ゆるされぬ恋しておれば毎日は恥ずかしいほど輝いていた

縫い針を刺してしまえりこんなにも柔いうつわに沈むたましい

絹さやの筋とる母と並び居て青いにおいをすんと吸い込む

湯あがりに風にあたればだいじょうぶわたしをみてる宵の明星

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未来2020年7月号のうた「春寂寥」

未来七月号、こんな大変な時期でも月初に届けていただきました。

未来の編集にたずさわってくださってる方々に、いつも以上に感謝を超えたきもちを抱いています。

本当に、有難うございます。

 

6月号については、全員の歌を一首一首読んで、いいな、好きだな、と思う歌を勝手にTwitterでツイートして未来会員以外にも広げたい祭りを勝手に開催していたのですが(前の記事をごらんください)、それは数か月さかのぼり、三月号アンソロジーを編む時にも全員分の歌を何周も読み返し、好きな歌なんだけどアンソロジーに入れるとちょっと合わない、などの理由で紹介できなかった歌がたくさんあり過ぎてオヨ…となったから、というのもありました。

 

結社誌を読めるのは未来会員だけのメリットかも知れないけど、他結社の方、それに短歌をまだ始めてはいない方にも、素敵な歌をたくさん紹介したいと思うのでした。

 

話が前後しましたが、今月号では「三月号アンソロジー」のページを担当させていただきました。これは本当に、凄く凄くいい勉強になりました。好きな歌人、気になる歌人もあらたにたくさん見つけられました。

テーマはコロナとはまったく全然関係なく、個人的に落ち込むことがあり、どん底だったのですが、どんなことがあっても受けて立つ強い気持ちを自分の中で確認できたので、「顔を上げる」としました。

三月号アンソロジーのページは公式サイトの最新号からリンクで読めるので、ぜひ、会員でない方にもお読みいただきたいと思います。

 

7月号の歌、タイトルは「春寂寥」です。これは出身校の寮歌で、わたしは寮生ではなかったけど学生時代の思い出といつもつながっています。

 

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春寂寥  森田しなの

それはそれは美しい姫がおりましたそこまで聴いて飲み干す紅茶

でたらめに生きてることは解ってるもしもの時のクスリは増えて

朝なさな丸みを増してゆくつぼみフリージア、急がなくていいから

春の夜はなくした指輪を思い出す小指に片羽のありし日のこと

挿す花のないまま飾るからっぽのガラスの花瓶の意外な厚み

前髪を花切り鋏で切り揃えこれでええわとつぶやいてみる

バンカラなマント姿は甦るYouTubeにて寮歌を聴けば

巨大なる手が降りてきて捥いでゆく二〇二〇春を根こそぎ

本を読む気力もなくて立ったまま大下容子アナを見ている

ひと月を家に籠りて過ごしたりふんわりとした脛毛にふれる

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二月の歌会以降、短歌の話ができる人と会っていません。

短歌を始めて以来、最も長く独りぼっちです。

オンライン歌会も盛んだと聴きますが、わたしのような人見知りは顔を合わせての歌会の方が安心できるので、オンライン歌会には二の足を踏んでいます。

早く、短歌のことを話せる人に会いたい!!!

 

 

未来6月号全員の歌を読んでみた

以前に、アンソロジーを担当させていただいた時、その月の未来を全員分一首一首読んだのだけど、ああ~この歌すきなんだけど、アンソロジーのテーマのなかに並べると合わないからやめておこう、、、でも紹介したいなあ、みたいな気持ちがたびたびあって、今回ふと思いついて、6月号を全員分読んで好きな歌を勝手にTwitterでツイートするというのをやってみました。

 

未来会員以外だと未来の結社誌を読む機会ないから、そういう人にも良い歌を読んでほしくて、あと、短歌してないフォロワーさんが読んで短歌に興味もってくれたりしたら面白いな、という気持ちで始めたのですが、始めてしばらくしてから、未来会員でも全員の歌は読まないことの方が多いかも知れないなあ、とも思いました。

 

全員の歌を読む、ということは、なかなか骨がおれました。

いつもは気になってる人(だけでもけっこうな人数いる)を中心に読んで、あとはぱらぱらしながら読んで、気になる人を見つけたらさらに推し増しする感じです。

 

感想を本人にわざわざ伝えることもないし、そう考えると、発表しっぱなしはさみしいですね。

誰も読んでくれてないかも、、、という気持ちになることもあるから、工房月旦やアンソロジーに取り上げてもらえると、ああ、読んでもらえてる、、、有り難い、、、という気持ちになります。

 

わたしのようなまだまだお勉強途中の者に、良い歌だと思いました、とか好きな歌です、とか選ばれたり選ばれなかったりするのを良しとしない方もおられるかも知れないので、今回のTwitterでの連投ツイートが不愉快だったらごめんなさい。

 

今回全員の歌を読んでみて、選歌欄によっても傾向が違ったり、いろいろわかりましたが、とにかくコロナとマスクの歌が多かった!!!

コロナをそのまま詠まない工夫を感じる歌は好意的に読めた気がします。

 

未来2020年6月号のうた

コロナウイルスで自粛生活の間も、より一層のヒキコモリ生活をしていたわけですが、解除になりましたね。世間さまがおうちにこもるようになって、プロのヒキコモリとしてのアイデンティティの危機に悶々もーんとしてたので、まあ、いいっすわ。

 

こんな大変な時期であったにも関わらず、結社誌がきちんと6月1日に届けてもらえたので、表紙の未来ねこさんも神々しく感じました。外界との接点が異常に無いわたしにとって、月に一度届くひかりです。ありがとうございます。

 

今月号の歌を詠んだのは、3月初旬、ここ数年で最も精神的に混乱して、悩んだり泣いたり、いつも誰かしらとネットを通じて悩みを聞いてもらったり相談したりしてた時期でした。

未来を去ることも、この時、考えていました。歌をやめる、という気持ちは浮かばなかったので、他結社の先輩を通じて短歌をつづける方法を模索したりしていました。

 

でも、わたしは、やっぱり未来・夏韻集の子です。

わたしを支えてくれる先輩や仲間がいるから、気持ちをつよく持って、下世話な混乱にはまどわされず、わたしはわたしで短歌をやっていく、という信条の確認ができたのはよかったと思います。

 

そんな時の歌なので、ごちゃごちゃです。

よかったら、お読みください。

 

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恋人が気の合う友になってゆくカップの底の溶けない砂糖

お仕事の電話の敬語はまぶしくてきれいなリボンみたいに仕舞う

返信のメールが届く「なにとぞ」がいつもひらがら変換のひと

大相撲春場所無観客試合 静けさのなか聴く息づかい

新十両・翠富士関のインタビューよく笑うまるい顔を見守る

気がつけば贔屓は小兵ばかりなり向こう正面に舞の海さん

弓取を見届け一日を終わらしむ感情をシャットダウンしながら

変わらないわたし変わってゆくわたし夕暮れ影は溶けだしてゆく

暗暗とあなたのうしろに闇が居る眼が合えばきっと石になるでしょう

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工房月旦のページでは、大西久美子さんと工藤吉生さんに一首ずつ引いていただきました。ほんとうに、有り難いことです。何百人もの膨大な歌のなかで、地味で目立たないわたしの歌はかんたんに埋もれてしまうのですが、先輩方がこうして取り上げてくださって、ちゃんと読んでるよ、って評までしてくださると、とても前向きな気持ちになれて、ほんとうにほんとうにがんばろうって思います。

 

未来3月号の歌から、大西久美子さんには、

初雪の破片にふれる手のひらに跡を残さず消える結晶/森田しなの

工藤吉生さんには、

人と会うきもちをつくり家を出る冬陽ぬくもる運転席に/森田しなの

をそれぞれ引いていただきました。

 

どちらも、年末頃に詠んだ歌でした。

ありがとうございます。

(歌のことも短歌する環境のことも)いつも誰かが気にかけてくださること、感謝しながらもっともっと精進します。

これからも、よろしくお願いします!

 

未来2020年5月号のうた「ニトロは噛まずに」

今、世の中が非常時であるのに、いつものように「未来」5月号を届けてもらえること、ほんとうに有り難く感じます。

選者の方、編集をしてくださる先輩方、ほかにも見えないところで未来を作ってくださっている方たちに、感謝します。

 

さて。

明日は母の日です。

両親とは、わたしも兄も非常に折り合いが悪く、わたしがからだを壊して実家暮らしをするしかなくなってからしばらくは本当にきつかった。名古屋に帰りたくて、独りで好きに暮らしたくて、泣いてばかりだった。

最近は、考え方が変わらない親に対する諦めと、短歌という自分の世界に深く潜る装置を得たので、以前よりは円満に不仲です。

 

普段は忘れてるけど、わたしは一生母になることはないんだな、って母の日ぐらいは意識します。

まあ、10歳くらいの頃には「こども産まない」って固く決めてたので初志貫徹です。

 

 

未来5月号の歌はニトロをはじめて手にした頃なので、かなり昔のように思いますね。

 

このところ、「心臓やばい!」って時に限ってニトロは2階の寝室にあって、自分は1階の居間のソファで横たわってる、みたいな状況が多いので、薬剤師さんに言われたように常に一錠は携帯してないといけないのかも。。。

 

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ニトロは噛まずに  森田しなの

 

NHK短歌の大辻先生を母に紹介しつつ観ており

花首の落つる椿を忌む母とその痛ましさを愛おしむわれ

血の伯爵夫人に遠く導かれ美学に抗うすべ持たざらん

仏壇に上げたみかんが腐らない仏パワーと父は叫びぬ

門柱に居座る猿は南天の枝を引き寄せ実をむしり食う

生き物のにおいは苦手 中指でどうぶつしょうぎのゾウを動かす

気まぐれと呼べばあなたは消えてしまう秘密をもてば呼吸は浅い

ヒシナカの薬剤師さんは二度言えり ニトロは、噛まずに、舐めるようにと

薬袋を枕の右に据えながらニトロを噛まないイメトレをする

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今月号の工房月旦では、大西久美子さんに一首とりあげていただきました。

読んでもらえているんだっていう実感は、自信のないわたしにはとても大きな励みになります。ありがとうございます。

 

未来2月号から

周期表ながめておればおのずから毒性のある元素が浮かぶ/森田しなの

 

周期表あるあるかな、とおもったけど、わたしはあんまり飛躍した歌は詠めないので、ふつうのことでも丁寧に詠んでいきたいな、と思うことがあります。

 

 

未来2020年4月号の歌「心臓CT検査」

今月も、未来は無事に来ました。いつもありがとうございます。

 

今日から四月。

 

三月はとても貴重な機会をいただいて、未来を一首一首舐めるように何周も読みまくったので、四月号が届いて、なんというか、以前より愛着が深く一冊の重みが増して愛おしく感じられ、お会いしたことない未知の方の歌も丁寧に読めるようになりました。

 

まあー、三月は自分にとって、驚天動地のできごとがつづき、めちゃくちゃ悩んで泣いて相談して、大変な月だったけど、終わってみれば後半の充実で持ち直した感あります。

 

ほんとうに、わたしは関わってくださる人に恵まれていて、それだけはわたしの生まれ持った才能かな、と思います。そばに居ない方でも、直接面識がなくても、遠くからたくさんの方の影響をもらっているし、いつも、本当にありがとうございます。

 

四月号の歌は、タイトルまんま、心臓のCT検査に踏み切ったときの歌です。

血管を写すための造影剤をからだに入れると、副作用がある可能性、最悪死んでしまうこともある、ということで(副作用を起こす可能性は低いとは知っていても)、検査がおわるまでとてもとても怖かったです。こわすぎて、脈拍を落とす薬を二度飲んでも脈拍がばくばくで、仕方なくそのまま検査した程でした。

 

こんな怖くて憂鬱で嫌なことでも、いっちょ歌にしてやろう、キシシシ、、、みたいな気持ちがあるんですよねえ。

このままだと、自分が死んだら三途の川の自然詠とか詠んでしまいそうだわ。。。

 

今月号の歌、良かったら読んでみてください。

今月はいまいち、と思っていたけど、夏韻集、欄頭2番手で載せてもらってました。

自分の歌の良さがまだまだ自分でわからないです。

悪い癖ならわかってるんですけど。

 

 

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未来2020年4月号の歌 「心臓CT検査」

 

咳すれば血の味がする遠からず滅ぶ体を抱えて過ごす

 

永遠につづく真夜中さえあればジーザス他に何も要らねえ

 

心電図検査の吸盤貼るひとのひんやりとした指の感触

 

血管を拡張するというスプレー駄菓子のりんご味に似ており

 

点滴にて巡り来たるはとろとろと火照りをもよおす未知の流体

 

熱燗をあおったように熱くなり正しい反応なのか慄く

 

「ずいぶんと緊張されて。心臓の動きで判りましたよ」と聞く

 

門が締まる間際の大病院にいて暗き廊下を逃げ出してゆく

 

体内に造影剤を残しつつこわごわ吸い込む冷たい外気

 

父母のような年まで生きられぬそういう世代なんじゃないかな

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検査の結果は、まだもう少し手術の必要はなく経過観察の狭心症でした。

安心したら、その後、発作はめったに起きてません。

 

 

4月号では、工房月旦のコーナーでも1月号の歌を取り上げていただいていて、もうもう、有り難いことです。

わたしのような、目立つ活動もしていない、地味で発信力もない者にも読んでくださる方がいて、取り上げていただけると凄く励みになります。

 

未来1月号(あ、みらいプラザに載った号だー!)から、

さいかち真さんには、

人間をやめて居残りしたくなるタカアシガニの水槽の前/森田しなの

大西久美子さんには、

みずからの吐きたる泡を吸い込んで仰向けのまま過ぎゆくイルカ/森田しなの

こちらを取り上げていただきました。

 

うれしいです!ありがとうございます。

作った本人が考えるより、読み手の方がより良く意図を汲んで読んでくださると、ひええ~有りがた過ぎます~、、、と恐縮しつつ、自分の視野が広がって勉強になります。

もっともっと、がんばろう~って思います。

 

 

未来2020年3月号のうた「今生の罰」

今月号も無事に届きました。いつもありがとうございます。

 

今月号は、伊勢歌話会でいつも司会をお願いしていて、最近は毎日チャットのようにあれやこれや相談をしたり歌会関係ない愚痴も聞いてもらったりしている下谷育正さんのミニエッセイ「その日その日」が68ページに載ってます。下谷さんらしいわー、と思いながらニヤニヤ読みました。悪意のないニヤニヤと申しましょうか。そんな感じです。

 

工房月旦のページでは、鈴木美紀子さんに、12月号の歌から一首引いていただきました。

わたしのような、地味で目立たない歌にも見つけてわざわざ取り上げてくださる方がおられると思うと励みになります。

ありがとうございます。工房月旦なんて、わたしにはなかなか手の届かないページです。

ずっと前にも鈴木美紀子さんに一首引いてもらえたことがあり、その時もほんとうにうれしかったです。

12月号の連作からです。

お茶漬けを四杯食べて寝てやった夜中の俺が勝手にやった/森田しなの

 

今月号の歌は欄頭ファイブの二番手でした。畏れ多いことです。

順番はまったく気にしてません、とか言うと生意気みたいだけど、ちがうんです、晴れがましい位置に載るのがわたしには向いてなくて、怖いだけです。

 

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今生の罰    森田しなの

 

鯛焼きを水槽で飼う新月の夜に眺める激しい交尾

 

死神とお茶を飲みつつ聴いている世界の終わりを報せるラジオ

 

除光液の甘いにおいは満ち満ちて耽溺という言葉をおもう

 

ほんとうは偽薬ならばと考える薬物依存に怯える午後に

 

空腹はもっともリアル眠りから眠りの合間を這いながらゆく

 

人と会うきもちをつくり家を出る冬陽ぬくもる運転席に

 

初雪の破片にふれる手のひらに跡を残さず消える結晶

 

手袋を片方なくして帰る道エンドロールの如く降る雪

 

殺せずに一日終えたり今生の続く限りの罰と思いて

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殺すとか死神とか、よく出て来るなあ、わたしの歌。